指定管理の公共施設DXはシステム導入で終わらない|現場に定着して初めて見えること

ここまで、指定管理者の仕事や公共施設のWebサイト、そして公共施設を誰にとって使いやすくするべきなのかについて書いてきました。

今回はもう少し社内・現場側へ視点を移して、公共施設のDXについて書いてみようと思います。

DXという言葉は、ここ数年ですっかり一般的になりました。

新しいシステムを入れる。
紙をデジタル化する。
オンラインで手続きできるようにする。

もちろん、どれもDXを進めるうえでは必要なことです。

ただ、実際に公共施設のIT導入や業務改善に関わっていると、システムを導入しただけでは何も終わっていないと感じます。

むしろ、そこから現場で使われるようになるまでの方が難しいくらいです。

社内チャットへの移行ですら簡単ではない

分かりやすい例が、社内のコミュニケーションです。

現在も社内ではメールを中心としたやり取りがかなり残っています。

個人的には、日常的な社内コミュニケーションについてはチャットを中心にした方が、やり取りのスピードも上がり、情報共有もしやすくなると思っています。

ただ、実際に全体へ広げようとすると、

  • 利用者ごとのITリテラシーの差
  • アカウント数が増えることによるコスト
  • 全社へ展開するためのルール作り
  • 新しいツールを使うことへの心理的なハードル

など、さまざまな問題が出てきます。

以前、メール中心のやり取りから社内チャットへ移行しようとした際にも、想像していた以上に大きな壁がありました。

使っていたチャットツール自体は、個人的にはかなり分かりやすく、日本の企業でも使いやすいサービスだと思っています。

それでも、全員が自然に使えるわけではありませんでした。

この経験から、新しいシステムが使いやすいかどうかだけではDXは決まらないと感じるようになりました。

「分からなければ触ってみる」が全員の共通認識ではない

ITやWebの仕事をしていると、分からないものがあれば、とりあえず触ってみるという感覚があります。

ボタンを押してみる。

設定画面を開いてみる。

分からない言葉を検索してみる。

そうやって少しずつ操作方法を覚えていく。

私自身、それが当たり前になっていました。

しかし、現場では必ずしもそうではありません。

「分からないから今のままでいい」という考え方の人もいます。

これは良い悪いという話ではなく、IT側の人間と現場では、新しいシステムに対する向き合い方そのものが違うということだと思います。

導入する側が「これくらいなら誰でも使えるだろう」と考えてしまうと、そこで既にズレが生まれます。

どれだけ優れたシステムを導入しても、現場が使わなければ業務は変わりません。

公共施設では「非効率だから変える」ができないこともある

公共施設のDXでは、もう一つ大きな特徴があります。

指定管理者だけでは決められないことがあるという点です。

例えば、紙で行っている手続きや電話受付などを見て、「オンライン化した方が効率がいい」と思ったとしても、その運用が行政側のルールと結びついていれば、指定管理者の判断だけで変更することはできません。

行政側の運用や制度そのものが変わらなければ、こちらだけ新しい方法へ切り替えることができないケースもあります。

民間企業であれば社内判断で変更できることでも、公共施設では行政との調整が必要になる。

ここは、一般企業のDXとはかなり違う部分だと感じています。

そのため公共施設では、技術的にできるかだけではなく、制度や運用として変更できるかまで考えなければなりません。

システム選定で重視するのは「機能の多さ」ではない

業務改善のためのサービスを探していると、非常に多くのシステムが見つかります。

機能表を見ると、「あれもできます」「これもできます」と大量の機能が並んでいます。

ただ、個人的には機能の数そのものをそこまで重要視していません。

システムを選ぶ際に特に重視しているのは、

  • コストパフォーマンス
  • 実際の現場オペレーションに対応できるか

この2点です。

どれだけ多機能でも、現場の運用に合わなければ意味がありません。

逆に、機能自体はシンプルでも、現在の業務にうまく入り込み、現場の負担を減らせるのであれば、その方が価値は高いと思っています。

特に公共施設では、前の記事でも書いたように、施設ごとに運用条件がかなり違います。

ホテル、道の駅、コミュニティセンター、プール。

同じシステムを導入すればすべて解決するというものではありません。

システムに現場を合わせるのではなく、現場のオペレーションにシステムが対応できるか。

これは選定時にかなり意識している部分です。

「導入しました」はDXのゴールではない

システムを契約した。

アカウントを作った。

マニュアルを配った。

説明をした。

ここまで終わると、一見するとDXが進んだように見えます。

でも、個人的にはここはスタート地点だと思っています。

大切なのは、その後です。

現場スタッフが日常業務の中で普通に使っているのか。

以前より作業時間が減ったのか。

情報共有が早くなったのか。

ミスが減ったのか。

それまで別々に行っていた作業が整理されたのか。

実際の業務が変わって初めて、システムを入れた意味が出てきます。

導入実績を作ることと、DXが成功することは別の話です。

現場に浸透して初めてDXが始まる

私が公共施設のDXでまず重要だと思っているのは、現地への浸透です。

一部の担当者だけが使えるのではなく、必要な人が日常業務の中で自然に使っている状態。

ここまで来て、ようやく一段階進んだと言えると思います。

そして次に見るのが、業務効率が実際に改善したかどうかです。

新しい仕組みを入れた結果、以前より作業が増えてしまったのであれば意味がありません。

現場が使える。

業務が少し楽になる。

情報が整理される。

この状態まで持っていくことが重要です。

新しい課題が見えたら、むしろ一歩進んだ証拠だと思う

個人的に、DXが進んだと感じるもう一つのタイミングがあります。

それが、DXを進める前には見えていなかった新しい改善課題が出てきた時です。

一見すると、新しい問題が発生したようにも見えます。

でも、私はむしろ良い状態だと思っています。

例えば、一つの業務をデジタル化したことで、「今度はこの作業がボトルネックになっている」「この情報も連携できた方がいい」「ここは現場によって運用が違う」といった、新しい課題が見えることがあります。

それまでは別の大きな非効率に隠れていて、問題として認識すらできなかったものです。

一つ改善したからこそ、次の課題が見える。

そして、それをまた改善する。

この繰り返しが始まった状態こそ、本当の意味でDXが動き始めた状態なのではないかと思っています。

公共施設DXは「導入」ではなく「改善が続く状態」を作ること

公共施設のDXについて考えていると、結局のところ重要なのはシステムそのものではないと感じます。

もちろん技術は必要です。

便利なサービスも必要です。

予算も必要です。

しかし、それ以上に重要なのは、

  • 現場が実際に使えること
  • 現場のオペレーションに合っていること
  • 行政側のルールと両立できること
  • 導入によって業務が改善されること
  • 改善後に見えてきた次の課題へ進めること

だと思っています。

DXというと、大きなシステムを導入したり、最新技術を使ったりするイメージを持たれがちです。

でも、公共施設の現場で必要なのは、必ずしも大掛かりな改革だけではありません。

小さな改善でも現場に定着し、それによって次の改善が始まる。

公共施設DXとは、システムを導入することではなく、現場の仕事の仕方を少しずつ変え、改善が続いていく状態を作ること。

今のところ、私はそんなふうに考えています。

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