指定管理施設のWi-Fi・ネットワークはどう作る?現場で実際に確認していること

ここまで、指定管理者の仕事や公共施設のDX、そして施設を引き継ぐ際のIT・システム周りについて書いてきました。

前回の記事では、指定管理施設の引き継ぎではネット回線やシステムなど、必要な情報を探すところから始まることも多いという話を書きました。

今回は、その続きにも近い話として、公共施設のWi-Fiやネットワーク環境について書いてみようと思います。

ネットワークというと、

「業務用と利用者用のWi-Fiを分ければいい」

「ルーターとアクセスポイントを設置すればいい」

というイメージを持つかもしれません。

もちろん、それも間違いではありません。

ただ、実際に指定管理施設のIT環境を確認していると、施設によって既存の構成も違えば、運営する企業の形も違います。

そのため、毎回同じ構成をそのまま当てはめられるわけではありません。

個人的には、公共施設のネットワーク構築で一番大変なのは、機器を設置することよりも、

「今この施設がどうなっているのか」を把握すること

だと感じています。

業務用と利用者用を分けるだけでは終わらない

まず基本的なところですが、業務で利用するネットワークと、施設利用者向けのWi-Fiを同じ環境にすることは基本的にありません。

セキュリティ面はもちろんですが、障害が発生した際の切り分けという意味でも分けておいた方が管理しやすくなります。

ただ、指定管理施設の場合は、それだけでは終わらないことがあります。

指定管理は、必ずしも一つの会社だけで施設全体を運営しているわけではありません。

複数の企業でJVを組んで運営するケースがあります。

例えば、

  • 施設全体を統括する企業
  • イベント運営を担当する企業
  • 建物や設備の維持管理を担当する企業

といった形です。

同じ施設の中で働いていても、それぞれ所属する会社が違うことがあります。

そうなると、

「全部同じ業務用ネットワークでいいのか」

という話になります。

扱っている情報や利用するシステム、業務内容によっては、それぞれの環境を分けて考える必要があります。

利用者用と業務用を分ければ完成、という単純な話ではないというのが、指定管理施設のネットワークを見ていて感じる部分です。

決済用の回線を完全に分けることもある

施設によっては、決済システムで利用する回線を、その他の業務で使用する回線と完全に分けることもあります。

例えば、

・事務所PCや業務システムで利用する回線

とは別に、

・POSやキャッシュレス決済などで使用する回線

を別契約で用意するケースです。

物理的に別のインターネット回線を引いて、それぞれ独立した環境として運用します。

これは施設によって考え方も構成も違うので、

「公共施設なら必ずこの形にする」

というものではありません。

ただ、障害が発生した時に影響範囲を分けられるという点は大きいと思っています。

業務用ネットワーク側で障害が起きても決済は動く。

逆に決済側で問題が起きても、事務所の業務環境には影響しない。

ネットワークを分ける目的は、セキュリティだけではなく、何か起きた時にどこまで影響するのかを分けておくことでもあります。

利用者向けWi-Fiも施設によって全然違う

利用者向けWi-Fiについても、施設によってスタート地点が違います。

行政側ですでに利用者向けの回線を契約し、Wi-Fi環境まで整備されている施設もあります。

一方で、利用者向けWi-Fiがそもそも用意されていない施設もあります。

その場合は、指定管理者側で新たに回線を契約して整備することもあります。

この辺りは公募時の提案内容にもよります。

施設の利便性向上策としてWi-Fi環境を整備する提案をしていれば、それを指定管理開始までに準備することになります。

つまり、

行政から渡された環境をそのまま使うケースもあれば、自分たちで新しく作るケースもある

ということです。

施設によって前提条件が全然違います。

まずは今あるネットワークを全部確認する

新しく施設を引き継ぐ際、ネットワーク周りでは基本的に一通り確認します。

例えば、

  • インターネット回線
  • 回線事業者
  • プロバイダ
  • 契約名義
  • ルーター
  • UTM
  • アクセスポイント
  • 有線LAN
  • SSID
  • 業務用Wi-Fi
  • 利用者向けWi-Fi
  • 電話回線
  • 決済系ネットワーク
  • ネットワークを利用している各種システム

などです。

もちろん、施設によって存在しないものもあります。

逆に、これ以外の設備があることもあります。

前回の記事でも書きましたが、資料だけですべて分かるとは限りません。

そのため、現地へ行って実際に機器を見ることもあります。

ルーターは何が入っているのか。

UTMはあるのか。

APは何台あるのか。

どこに設置されているのか。

どの回線につながっているのか。

そして契約は誰の名義なのか。

現在の環境を一度整理したうえで、

そのまま使えるものと、新しく用意するものを分けていきます。

全部入れ替えるわけではない

新しく指定管理を始めるからといって、ネットワーク機器をすべて新品へ交換するわけではありません。

既存環境を確認して、問題なく使えるのであればそのまま利用することもあります。

逆に、必要なものがなければ追加します。

例えば、

UTMが必要であればUTMを手配する。

Wi-Fiを飛ばしたい場所にアクセスポイントがなければAPを追加する。

既存回線を継続するのであれば名義変更を行う。

構成そのものを変える必要があれば、新しく回線を契約する。

というように、施設ごとに対応は変わります。

そのため、

「この機器を入れておけば大丈夫」

という考え方ではなく、

現在の環境と、これから自分たちが行いたい運営を照らし合わせて必要なものを決める

という形になります。

ネットワークだけを見ても判断できない

ここも公共施設のIT環境で難しいところだと思っています。

ネットワークだけを見て、

「この構成が一番きれい」

という形にすればいいわけではありません。

その施設で何をするのかによって必要な環境が変わります。

例えば、

イベントの予約管理をする。

キャッシュレス決済を使う。

事務所でクラウドサービスを使う。

監視カメラがネットワークにつながっている。

利用者向けWi-Fiを提供する。

JVを組んでいる別企業も館内で業務をする。

こうした条件を全部見ながら構成を考えます。

コミュニティセンターと道の駅でも違います。

プールと宿泊施設でも違います。

施設という「商材」が変われば、求められるネットワーク環境も変わります。

だからこそ、特定の構成を覚えてそれを毎回使うというより、その都度必要なものを調べて組み合わせていくことが多いです。

指定管理のITは「正常に動いて100点」

これはネットワークだけではなく、指定管理施設のIT全般について感じていることですが、

基本的に正常に動いている状態が100点です。

インターネットにつながる。

電話が使える。

決済ができる。

予約システムが動く。

スタッフがPCを使える。

利用者向けWi-Fiが使える。

全部普通に動いていて、ようやく通常の状態です。

ネットワークが一週間止まらなかったからといって、

「今週はネットが正常に動いていて素晴らしい」

とはなりません。

逆に、一度トラブルが起きれば、

「ネットにつながらない」

「決済できない」

「電話が使えない」

という話になります。

個人的には、ITインフラの仕事はかなり減点方式に近い仕事だと思っています。

しかも準備期間はそこまで長くない

さらに指定管理の場合、準備期間がかなり限られていることがあります。

ケースによって違いますが、次期指定管理者が決まるのが前年の秋頃で、実際の運営開始は4月1日ということもあります。

そこから数か月の間に、

現在の環境を確認する。

契約内容を確認する。

回線の名義変更をする。

必要な機器を手配する。

不足している設備を追加する。

システムを準備する。

PCなどの端末を用意する。

そして4月1日から普通に施設を動かす。

というところまで持っていかなければなりません。

もちろんネットワークだけを準備しているわけではなく、同時に施設運営全体の引き継ぎが進んでいます。

その中でIT環境も、運営開始日までに100点、少なくともそれに近い状態まで持っていく必要があります。

ここが指定管理施設のIT担当として難しい部分の一つだと思っています。

最初から正解の構成が見えているわけではない

公共施設のネットワークについて書いてきましたが、毎回最初から完成形が見えているわけではありません。

行政によって既存環境が違う。

施設によって必要なシステムが違う。

JVの構成によって利用者が違う。

既存設備によって使えるものも違う。

提案した運営方針によって新しく必要になるものも違う。

そのため、

まず現状を把握して、そこからその施設に合った形を考える

という流れになります。

ネットワークについて非常に深い専門知識を持っていることももちろん重要だと思います。

ただ、実際に指定管理施設のIT環境を整えていく中では、それと同じくらい、

広く浅くでもさまざまな分野の知識を持ち、分からない部分はその都度調べながら組み立てていく力

が必要だと感じています。

公共施設のネットワークに「いつもの構成」はない

業務用と利用者用のネットワークを分ける。

必要に応じて決済系を分ける。

セキュリティを考える。

障害が起きた際に切り分けできるようにする。

こうした基本的な考え方はあります。

ただ、その先の具体的な構成は施設によって変わります。

行政が何を用意しているのか。

前の指定管理者がどんな設備を使っていたのか。

どんな企業が施設運営に参加するのか。

どんなシステムを使うのか。

自分たちがどんな運営を計画しているのか。

それらを確認したうえで、必要な環境を作っていくことになります。

指定管理施設のネットワーク構築で最初にやるべきことは、新しい機器を選ぶことではなく、今ある環境を正しく把握すること。

そして、その施設の運営方針に合わせて必要なものを一つずつ組み合わせていく。

いくつかの公共施設のIT環境に関わってきて、今のところ私はそんなふうに考えています。

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