
前回は、指定管理者って何をするの?というかそもそもどういう仕組みでどういうことをやっているの?等内容ついて書きました。
指定管理者として公共施設に関わっていると、Webサイト制作は普通の企業サイトとはかなり違うと感じます。
単に会社情報やサービス内容を掲載して、問い合わせフォームを設置して終わり、という話ではありません。
施設そのものの利用方法、予約、料金、イベント、貸室、宿泊、駐車場、そして周辺システムまで含めて考える必要があり、実際にはWebサイトというより施設運営の一部をデジタル化する仕事に近いと感じています。
今回は、指定管理者が運営する公共施設のWebやシステムに実際に関わる中で感じている、一般的な企業サイトとの違いについて書いてみます。
公共施設のWebサイトは「見る人」が一種類ではない
まず大きな違いとして感じるのが、同じ施設でもサイトを見る人の目的が全く違うことです。
例えば音楽ホールで考えてみます。
大きく分けるだけでも、利用者は2種類います。
- 音楽ホールで行われる催しを見に来る来場者
- 音楽ホールを借りて公演を行う主催者
来場者が知りたいのは、
- どんな催しが行われるのか
- 開催日時
- チケット情報
- アクセス
- 駐車場
- 座席
といった情報です。
一方、主催者側が探しているのは、
- 施設利用料金
- 空き状況
- 予約方法
- 舞台や音響設備
- 搬入方法
- 申請書類
- 利用上のルール
といった情報です。
同じ「利用者」であっても、サイトに求めている情報は全く違います。
そのため、公共施設のサイトでは単純に情報を並べるだけではなく、誰が、何を目的としてサイトに来るのかを分けて考える必要があります。
Webサイトだけ作れば終わり、ではない
指定管理の公共施設でWebまわりを担当していると、サイト制作だけで仕事が完結するケースはほとんどありません。
貸室がある施設なら予約システムが必要になりますし、宿泊施設ならホテルシステム、サイトコントローラー、OTAとの連携なども考える必要があります。
施設によってはオンライン決済や会員管理など、さらに別のシステムが関係してくることもあります。
そして、これらについても単に「このシステムを使いましょう」と決めれば終わりではありません。
実際には、
- 施設の運用条件を整理する
- 条件に合いそうなサービスや業者を探す
- 問い合わせを行う
- 仕様を確認する
- 見積もりを比較する
- 現場や行政側の要望を伝える
- 必要に応じてWebサイトとのつなぎ方を考える
- 導入に向けて業者と調整する
- 最終的に利用者が使える状態までリリースする
というところまで持っていく必要があります。
つまり、単純にWebサイトを制作するというより、施設運営に必要なデジタル環境をつなげていくという感覚に近いです。
公共施設の予約システムは意外と複雑
特に難しいと感じるのが予約システムです。
民間の会議室予約サービスのように「空いている時間を選んで予約する」だけなら、それほど複雑ではありません。
しかし、公共施設では施設固有のルールが細かく設定されていることがあります。
例えば、Aという区画がBとCという2つの区画を合わせたスペースだったとします。
Bに12時から14時まで予約が入った場合、その時間帯はA全体を貸し出すことはできません。
ただし、Cだけなら予約できる。
つまりシステム側では、Bが予約される → Aも同時間帯は予約不可 → Cは予約可能という連動制御が必要になります。
利用者から見れば単純な予約画面でも、その裏側ではこうした施設独自の条件を処理する必要があります。
部分貸しによって料金まで変わることもある
さらに複雑なケースもあります。
例えばDという大きな敷地があり、その中の一部にE、Fという駐車スペースがあるとします。
このE、Fはキッチンカーなどの出店スペースとして個別に貸し出せる。
ある日に、
- Dは終日利用
- Eは12時〜15時まで別の利用者が利用
- Fは11時〜13時までさらに別の利用者が利用
という状態になった場合、Dを完全に占有して借りる場合と比べて、利用できない時間帯や範囲が発生します。
そのため、Dの利用料金を通常より少し減額する、といったルールが設定されることもあります。
こうなると単純な予約管理ではなく、施設区分 × 時間帯 × 予約状況 × 利用範囲 × 料金まで組み合わせて考える必要があります。
利用者によって予約開始日が違うこともある
公共施設ならではだと感じるのが、利用者属性による違いです。
例えば一般利用者よりも、地域の団体は1か月早く予約を開始できる、といったルールです。
この場合、一般利用者と地域団体で予約受付開始日を変える必要があります。
利用者から見れば「予約できる・できない」というシンプルな話ですが、裏側では利用者属性まで含めた条件分岐が必要になります。
行政が関わることで、後から条件が出てくることも多い
指定管理の仕事では、当然ながら行政との調整が発生します。
ここも一般的な民間企業のWeb制作とは少し違う部分です。
特に難しいと感じるのが、制作やシステム選定を進めている途中で、細かい運用条件が後から出てくることです。
最初に提示された条件だけを見ると問題なく進められそうでも、実際の運用について話をしていくと、「この場合はこうしてほしい」「地域団体の場合はルールが違う」「この区画を借りた場合はこちらは貸せない」といった条件が追加で出てくることがあります。
しかも、それが単なる掲載文言の修正ではなく、予約可否や料金計算そのものに影響する場合もあります。
また、行政側の担当者が必ずしもWebやシステムに詳しいとは限りません。
必要な情報がなかなか出てこなかったり、制作側から具体的に確認して初めて条件が分かることもあります。
制作側としては、行政や現場から出てくる条件を聞き取りながら、実際にシステムで実現できる形に変換していく必要があります。
現場はホームページどころではない
もう一つ大きいのが、現場側の事情です。
公共施設の現場では、当然ながら日々の施設運営が最優先です。
利用者対応、設備管理、イベント準備、職員管理など、やることは大量にあります。
その中でホームページ制作や更新は、どうしても後回しになりがちです。
これは新しい施設の運営を始める時でも、通常運営に入った後でもあまり変わりません。
制作側が、「このページに掲載する情報をください」「この部分の運用はどうなりますか?」と確認しても、なかなか情報や要望が上がってこないことがあります。
そのため、ある程度こちらで仮定を置きながら制作を進めることになります。
そしてコーディングがかなり進んだ段階になって、「実際の運用ではこうしたい」という追加要望が出てくることも珍しくありません。
制作側からすれば「もう少し早く分かっていれば」と思う場面ですが、現場側にも現場側の事情があります。
この調整も、公共施設のWeb制作ではかなり重要な仕事の一つです。
サイトは基本的に現場で更新していく
指定管理者が運営する公共施設のWebサイトは、公開後の更新も基本的に各施設の現場が担当します。
施設の開業直後など、一時的に本社側で更新を支援することはありますが、長期的には現場スタッフが更新していくケースがほとんどです。
イベント情報や休館案内、施設のお知らせなどは現場が一番早く情報を持っているため、これは自然な形でもあります。
ただし、ここでも問題になるのが担当者の業務量です。
施設長、もしくはその次くらいの立場の人がホームページ担当を兼任することも多いのですが、このあたりの人たちは施設運営そのもので手いっぱいです。
結果として、ホームページを更新したいけれど、そこまで手が回らないという状態になりやすいです。
公共施設こそ「広報担当」が必要だと思う
個人的には、施設長とは別に、広報全般を担当する人がいるだけでもかなり状況は変わると思っています。
その人が、
- 現場の意見を聞く
- 行政側の要望を確認する
- Webサイトに必要な情報を整理する
- イベントや広報情報をまとめる
- 最終的な要望を本社側へ伝える
という役割を担ってくれるだけでも、制作や運用はかなりスムーズになります。
特に重要なのは、いろいろな人からバラバラに要望が届くのではなく、現場側で一度整理された「正の要望」が本社側へ上がってくることです。
現場と行政の意見を聞き、それを整理して制作側へ伝える人がいれば、Webサイト制作だけでなくシステム導入やその後の運用までかなり進めやすくなると思います。
公共施設のWebは「施設運営そのもの」の一部
公共施設のWebサイトを作っていて感じるのは、単なる広報ツールではないということです。
利用者に必要な情報を届けるだけでなく、
- 予約
- 料金
- 利用申請
- イベント
- 施設情報
- 宿泊
- 外部システム
など、実際の施設運営と密接につながっています。
そして、その裏側には利用者、現場スタッフ、行政、システムベンダー、本社と、さまざまな立場の人がいます。
Web制作側は、その間に入って情報や要望を整理し、最終的に利用者が迷わず使える形へ落とし込んでいく必要があります。
一般的な企業サイトと比較すると、ページを作ることそのものよりも、運用と調整の比重がかなり大きいのが指定管理の公共施設Webの特徴なのかもしれません。
そして個人的には、そこが難しさでもあり、面白さでもあります。
次回はもう少し視点を利用者側へ移して、「公共施設は誰にとって使いやすくあるべきなのか」について書いてみようと思います。


