概要 1996年にリリースされた『DAHLIA』は、X JAPANにとって4枚目のオリジナルアルバムであり、バンドとしての“終わり”と“再生”が刻まれた集大成的作品です。
激しいスピードメタル「DAHLIA」やキャッチーな「Rusty Nail」、叙情的な「TEARS」や「FOREVER LOVE」など、極端な静と動を内包する楽曲群は、当時のメンバーの音楽的成熟と個性が色濃く反映されています。
クラシック、インダストリアル、バラードとジャンルを自在に横断するその幅広さは、X JAPANというバンドの限界のなさを改めて示すものです。
本記事では、そんな『DAHLIA』に収録された全曲を丁寧に読み解いていきます。
ジャンル ロック・ヘヴィメタル
発売日 1996年11月4日
収録曲数 10曲
収録時間 57分21秒
レーベル アトランティック・レコード

DAHLIA

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 X JAPAN

アルバムの幕開けを飾る「DAHLIA」は、スピードとドラマが融合した代表的なナンバーです。イントロのシンセから一気に加速するツーバス、切り裂くようなギターリフ、そして激情を叩きつけるようなTOSHIのボーカルが印象的です。歌詞には「破壊(Destruction)」「希望(Hope)」「自由(Liberty)」といったキーワードが連なり、バンドの内面を象徴するようなメッセージが込められています。サウンド面ではクラシックとメタルの融合が極まっており、X JAPANの音楽的頂点を示す1曲といえるでしょう。ライブでも非常に人気の高い楽曲です。

SCARS

作詞 HIDE 作曲 HIDE 編曲 X JAPAN

「SCARS」はHIDEが作曲したインダストリアル色の強いロックチューンで、X JAPANの中でも特異な存在です。ザラついたギターサウンドとエフェクトの効いたミックスが、90年代以降のHIDEのソロワークに通じる世界観を先取りしています。歌詞は抽象的で解釈の余地があり、英語詞を多く含むスタイルは当時としては斬新でした。従来のXらしさとは一線を画すこの曲がアルバムに収録されたことは、X JAPANの音楽的挑戦を示す象徴的な出来事といえるでしょう。

Longing ~跡切れたmelody~

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 X JAPAN

「LONGING」は、繊細なピアノと静かなストリングスに包まれた、叙情的なバラードです。歌詞では、愛する人との別れや喪失感を詩的に描いており、TOSHIの表現力豊かな歌唱が深い感情を伝えています。YOSHIKIの作詞作曲によるこの楽曲は、バンドの持つ“静”の側面を美しく表現しており、聴くたびに胸を締めつけられるような切なさがあります。ミックス違いで複数バージョンが存在することでも知られ、ファンの間では特に思い入れの強い楽曲です。

Rusty Nail

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 X JAPAN

「Rusty Nail」は、キャッチーなメロディと重厚なギターが融合したX JAPAN屈指のヒット曲です。イントロから耳に残るフレーズが展開され、TOSHIのボーカルも力強さと繊細さを併せ持っています。歌詞には心の傷や痛みをテーマにしたフレーズが並び、恋愛や人間関係の壊れやすさを感じさせる構成です。テレビ出演やCMタイアップもあり、X JAPANを広く一般層に知らしめた代表曲のひとつといえるでしょう。サウンド的にもアルバム内のバランスを取るポジションにあります。

White Poem I

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 YOSHIKI

「WHITE POEM Ⅰ」は、幻想的なシンセサウンドとナレーション風のボーカルが印象的な実験的トラックです。全体的に静かで浮遊感のある構成となっており、X JAPANの中でも異色の楽曲といえます。詩的なリリックと、メロディよりも雰囲気で聴かせるサウンドアプローチは、リスナーに深い余韻を残します。ライブでは演奏されることが少ないため、アルバムでのみ味わえる特別な1曲とも言えるでしょう。

CRUCIFY MY LOVE

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 YOSHIKI

「CRUCIFY MY LOVE」は、ピアノを基調としたバラードで、切なさと透明感が印象的な楽曲です。TOSHIの柔らかなボーカルが、YOSHIKIの美しい旋律と絡み合い、静かに心を打ちます。歌詞には愛の終焉と痛みが綴られており、穏やかなサウンドの中に強い感情が込められています。英語詞で構成されているため、国際的なリスナーにも受け入れられやすく、バンドのグローバルな展開を見据えた作品ともいえるでしょう。

Tears

作詞 白鳥瞳・YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 X JAPAN

「TEARS」は、X JAPANのバラードの中でも特に人気の高い名曲であり、YOSHIKIの母親への想いが込められた非常に個人的な作品です。静かなピアノとストリングスのアレンジが織りなす美しさは、聴く人の心に深く染み入ります。TOSHIのボーカルは哀しみに寄り添うようなトーンで、歌詞の中にある優しさと痛みを丁寧に表現しています。この曲はテレビや映画などでも使用され、多くのリスナーに愛されるバラードの代表格です。

WRIGGLE

作詞 - 作曲 HEATH・PATA 編曲 HEATH

「WRIGGLE(リグル)」は、HIDEとPATAによるギターを中心に構成されたインストゥルメンタル楽曲で、アルバム『DAHLIA』の中で数少ないノンボーカルトラックです。冒頭から不穏な空気を漂わせるディストーションと不規則なリズムが印象的で、全体的に実験性の高いサウンドとなっています。タイトルの「WRIGGLE(身をくねらせる、もがく)」の通り、ねじれるような音の流れと、鋭く切り込むようなギターフレーズが特徴で、聴く者に緊張感を与えます。X JAPANの派手で劇的な楽曲とは一線を画し、ノイズ的要素や構造の崩しを楽しむアヴァンギャルドな一曲として、アルバムの中で独自の存在感を放っています。

DRAIN

作詞 HIDE・TOSHI 作曲 HIDE 編曲 HIDE

「DRAIN」はHIDE主導で制作されたインダストリアル系の楽曲で、エッジの効いたギターリフとミニマルなビートが特徴です。サウンドはロックというよりもオルタナティブやデジタルロックに近く、ソロ時代のHIDEのスタイルを強く反映しています。英語詞とサンプリングの使い方も斬新で、X JAPANの枠を超えたサウンドへの挑戦が感じられます。HIDEの実験精神が詰まった意欲作として、アルバムの中でも異彩を放つ存在です。

Forever Love (Acoustic Version)

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 YOSHIKI

「FOREVER LOVE」は、X JAPANが世に送り出したラブバラードの決定版ともいえる一曲です。壮大なストリングスとYOSHIKIのピアノに包まれ、TOSHIのエモーショナルな歌声がドラマティックに展開します。歌詞には永遠の愛への願いと、それに伴う切なさが込められており、多くのファンにとって結婚式や人生の節目に選ばれる楽曲となっています。X JAPANの“美”の象徴的存在であり、後期のバンドのイメージを決定づけた名曲です。

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