概要 1991年にリリースされたX JAPANのセカンドアルバム『Jealousy』は、メンバー5人が揃って制作した最後のスタジオ作品にして、バンドの音楽的完成度が頂点に達した一枚です。
激しいスピードメタル「Silent Jealousy」から、美しいバラード「Say Anything」、さらに実験的かつユーモラスな楽曲まで、多様な音楽性が詰め込まれた本作は、X JAPANの幅広い表現力と進化の証です。
クラシック的要素とメタルの融合、そして各メンバーの個性が高いレベルで調和した『Jealousy』は、今なお色褪せることのない傑作といえるでしょう。
ジャンル ロック・パワーメタル
発売日 1991年7月1日
収録曲数 10曲
収録時間 50分17秒
レーベル Sony Records

Es Durのピアノ線

作詞 - 作曲 YOSHIKI 編曲 YOSHIKI

アルバムのオープニングを飾る「Es Durのピアノ線」は、YOSHIKIの美しいピアノソロ曲です。
クラシック音楽の影響を強く受けたこのインストゥルメンタルは、アルバム全体の壮大で感情豊かな雰囲気を予感させます。
優雅でメランコリックな旋律は、聴く者の心を穏やかにし、次に続くロックナンバーへの心の準備を整えます。

Silent Jealousy

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 X

「Silent Jealousy」は、X JAPANの楽曲群の中でも特に高い完成度を誇るスピードメタルの名曲です。クラシック音楽を思わせる重厚なピアノのイントロから、激しいツーバスとツインギターが一気に畳みかける展開は、圧倒的なスケール感とドラマ性を感じさせます。TOSHIのボーカルは切なさと激情を兼ね備え、楽曲のテーマである“声なき嫉妬”の苦しみを力強く描き出しています。YOSHIKIの作詞・作曲による構成美も見事で、ただ速くて激しいだけではない、感情の起伏に満ちた作品となっています。ライブでも定番の人気曲であり、X JAPANの音楽性の真髄が詰まった代表的な一曲です。

Miscast

作詞 HIDE 作曲 HIDE 編曲 X

「Miscast」は、鋭いギターリフと疾走感あふれるドラムが印象的な、アルバムの中でも攻撃性に富んだ楽曲です。HIDEによるキャッチーで切れ味鋭いフレーズが光り、バンド全体の演奏も引き締まった印象を与えます。歌詞では、自分自身を“ミスキャスト”と感じる苦悩や葛藤が表現されており、X JAPANが当時抱えていたアイデンティティの揺らぎも感じ取れます。ライブではファンとの一体感が強く、ギターとボーカルの掛け合いが特に盛り上がるポイントです。ハードなだけでなく、緻密に構成された展開からは、Xの音楽的成熟を感じさせる楽曲です。

Desperate Angel

作詞 TOSHI 作曲 TAIJI 編曲 X

「Desperate Angel」は、どこか懐かしさを感じるメロディラインと、情熱的な演奏が融合したミドルテンポのロックナンバーです。サビのキャッチーさと、HIDEらしい遊び心のあるアレンジが特徴で、アルバム全体の中でも良い意味で肩の力が抜けた一曲となっています。歌詞は、愛と混乱の間でもがく“必死な天使”を描き、ポップでありながら深い情緒を内包しています。TOSHIのボーカルも柔らかさと力強さを併せ持ち、X JAPANの表現の幅広さを感じさせるナンバーです。

White Wind From Mr.Martin ~Pata's Nap~

作詞 - 作曲 PATA 編曲 PATA

このインストゥルメンタル曲は、PATAによるアコースティックギター主体の穏やかな楽曲です。アルバム全体の激しさの中にあって、ひとときの休息のような存在となっています。PATAのナチュラルで温かみのあるギターの音色が、荒々しい曲が多い『Jealousy』の中で静かな存在感を放ちます。短い曲ながらも、バンドの“音を聴かせる”という姿勢が伝わる美しいトラックです。

Voiceless Screaming

作詞 TOSHI 作曲 TAIJI 編曲 X

「Voiceless Screaming」は、TAIJIが作曲を手がけたアコースティックバラードで、ベースとギターの絡みが繊細かつ感情的に展開されます。TOSHIの歌声は抑制の効いたトーンで始まり、次第に感情を高ぶらせていく構成が印象的です。歌詞では“声にならない叫び”として、内に秘めた悲しみや孤独が描かれ、バンドの叙情性が前面に出た一曲です。TAIJIの音楽的才能が色濃く反映されたこの曲は、X JAPANのバラードの中でも異質かつ深い余韻を残す作品といえます。

Stab Me In The Back

作詞 白鳥瞳 作曲 YOSHIKI 編曲 X

「Stab Me In The Back」は、X JAPANのインディーズ時代の荒々しさをそのまま感じさせる、スラッシュメタル色の強い一曲です。高速のリフとアグレッシブなドラム、そしてTOSHIのシャウト気味のボーカルが一体となり、バンド初期の攻撃的なエネルギーを放っています。歌詞の内容はタイトルの通り、裏切りや怒りを直接的に表現しており、初期Xの破壊衝動的な側面を体現しています。スタジオ音源での収録は稀で、ライブ映像や過去作『Vanishing Vision』でしか聴けなかったこの楽曲が『Jealousy』で再録されたことは、ファンにとっても大きな驚きでした。後年のシンフォニックなXとはまた違った、荒削りな魅力を味わえるナンバーです。

Love Replica

作詞 HIDE 作曲 HIDE 編曲 HIDE

「Love Replica」は、X JAPANの楽曲の中でも異色中の異色といえる実験的なサウンドアート作品です。囁くようなウィスパーボイス、ノイズ混じりのSE、不協和音的なギターのアルペジオなどが混在し、明確なメロディラインやリズムが存在しない構成となっています。HIDEの前衛的な感性が強く反映されており、楽曲というよりも“音のインスタレーション”と呼ぶべき仕上がりです。リスナーによって評価が分かれる一曲ではありますが、X JAPANの創造性や表現の幅広さを象徴する存在として貴重な作品です。『Jealousy』というアルバムの中で、最もダークで不可解な余白を担っている楽曲です。

Joker

作詞 HIDE 作曲 HIDE 編曲 X

「Joker」は、重たくなりがちな『Jealousy』の中にあって、ポップで軽快なノリを持つロックンロール調の楽曲です。HIDEが作詞作曲を手がけており、ダーティかつユーモラスな雰囲気が際立っています。ギターリフはシンプルながら中毒性があり、ベースとドラムのグルーヴ感も心地よく、ライブでも盛り上がる一曲として知られています。歌詞は、女性に翻弄される“ジョーカー”の視点から描かれており、X JAPANの中でも数少ない“遊び心”を前面に出したナンバーです。HIDEらしい皮肉とセンスが光る楽曲であり、アルバムの緩急をつけるアクセントとしても重要な役割を果たしています。

Say Anything

作詞 YOSHIKI 作曲 YOSHIKI 編曲 X

アルバムを締めくくる「Say Anything」は、X JAPAN屈指の名バラードであり、YOSHIKIの繊細なピアノとTOSHIの情熱的なボーカルが見事に融合しています。愛する人との別れとそれに伴う痛みをテーマに、静かな導入から壮大なクライマックスへと展開するドラマチックな構成が特徴です。演奏面でも各パートが感情を丁寧に表現しており、特に後半にかけての盛り上がりは圧巻です。バンドの“終わりの始まり”を示唆するかのような余韻を持ち、ファンの間でも特別な意味を持つ一曲となっています。

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